ミッキーの店 クアランプールの屋台街、ジャラン・アロー。マレーシア料理

食べ歩き ,

2月。美味満腹団が向かったのは、マレーシアのクアランプールである。

マレーシア料理? 一般の日本人にはなじみがないかもしれない。しかし、マレー系約65%、華系約24%、インド系約8%で構成する多民族国家のマレーシアには、多用な美味文化が存在するのである。

なにしろマレーシア人の、もっとも一般的な挨拶は、「スダマカン?(ご飯食べた?)」である。

たとえ初対面でも、ビジネスでも「スダマカン」。

「おいしいご飯を食べられるぐらい元気かい?」といったニュアンスのようで、「スダー(食べたよ)」と、笑顔で答えれば、「よかった」と、笑顔で返される。

宗教、行事、風習などが、民族ごとに異なるため、食事は、アイデンティティーを確認する場であり、同時に他民族との交流を深める、大切な場なのである。

うむ、こう聞くと、盛り上がるじゃないですか。料理の種類は、大別して「マレー系」、「中国系」、「インド系」、「ニャニョ系」の四大派閥がある。

到着した夜、我々満腹団は、早速「マレー系」の調査に向かった。

まずはクアランプールの屋台街、ジャラン・アローに向かう。

200メートルほどの大通りには、屋台とテラス席を設けた店が並びぶ。

通りの上には、ハロウィン風なカボチャ型の提灯が多く飾られ、夜の通りを華やかにしている。

どの店も満席、通りにも、千人近くの人々がひしめいている。

串焼きの海老を売る屋台、焼き魚の店、蛙粥屋、タイ料理屋、ドリアン屋、四川魚煮込み屋、サンざまな肉のサテ(串焼き)屋台、牛肉薄切り肉焼き屋台。

肉の焼ける香り、果物の香り、辛そうな香り、エビの殻の焼ける香り、独特なドリアンの臭い香り。クアランプールの食欲が、混沌と渦ん巻いている。

ああ、片っ端から入りたい。しかし目指すは、通称「ミッキーの店」である。

テラス席を設けた大型店で、軽く100人は入る。

正式店名は、「黄亜華小食店・WongAhWah」なのだが、「ミッキーの店」と呼ばれるのは、看板に大きくおなじみのネズミキャラクターが描かれているからである。

明らかに著作権侵害だが、絵がヘタすぎる。

これじゃあ訴えられもしないだろう。

大きなメニューには、10種以上の料理が写真付きで並んでいる。

英語表記あり。欧米人、豪州の旅行客や移住者が多いせいである。

地ビールSKOLで乾杯し、次々と料理を頼む。今夜のベスト5は、

5位「子袋の葱生姜炒め姜葱炒生腸」。生腸とあるが、豚の子袋である。甘辛い味付けが子袋に合って、ビールが進む。

4位「マレー風オクラと茄子の炒め・烏来桟炒茄子羊角」。日本の三倍はある、巨大オクラのぬめりと茄子の柔らかな食感との相性が、実においしい。

3位「手羽先のロースト」。店の名物。甘辛い醤油味でロースロされた鶏手羽先。よく運動した鶏なのだろう、皮が厚くなく、醤油の焦げた香りが,日本への郷愁を呼ぶ

2位「青菜のスープ」。英語表記は「ほうれん草スープ」だったけど、恐らくインツァイだろう。ツル紫のように少しヌメッとして、ほのかに苦みと甘みが有る青菜である。それが、干貝柱のうま味に青々しい香り滲んで、宴席の〆としていい。

1位「焼きかすべ」こちらにもエイはいる。一般的なのか? ヒレの軟骨とチヌのようなほの甘い身。味付けは塩のみという潔さ。一同しみじみと「うまい」と呟く。

その他蟹もマテ貝も、青菜炒めもマナガツオもアサリも頼み、最後はハムユイ炒飯ともやしとショートパスタのオイスター焼きそば風。

さすがの満腹団。着いた早々だというのに、調査の手は緩めない。