料理はすべて地味である。
すべて茶色か、くすんだ緑色である。
しかしこんなインスタ映えしない料理を、29歳の若者が一人で作っているのかと思うと勇気が湧く。
「できれば若い子に来てもらいたい。20代の子にイタリア郷土料理の良さをしってもらいたくて」と、彼はいう。
ごめんねおじさんで。
でもおじさんはこういう渋い料理が大好きなんだよ。
セモリナ粉入りブロッコリーのズッパは、やさしい甘みに満ちて、とろりと舌に流れ来る。
そら豆とほうれん草のピュレとクタクタに煮たチーマディラーパの、心揺するおいしさ。
サフランの粉をつけてスカペーチェ(南蛮漬け)にしたキビナゴは、その香りに溶けて旨味を出す。
酢煮にしたカルチョッフィの穏やかな甘みとじゃがいものたくましい甘みを、からすみの塩気が引き立てている煮込み料理
そしてサルディーニャの芋虫型パスタ、マッロレッドスは、サルシッチャのラグーソースのカンピタネーゼ仕立てで、笑うほどうまい。
様々な魚介と煮込んだフレゴラは、歯の間でむちっとはじけながら魚介の滋味をこぼす。
乾燥ポルチーニのリゾットも香り良いぞ。
セコンドは、乾燥そら豆と豚バラ肉、サルシッチャの煮込みといってみた。
豚脂の甘み、サルシッチャの香りにまみれてぐずぐずに崩れるそら豆の甘みにやられる。
ワインを5本飲んだせいか、さらにお腹がすいて来た。
そこでさらに締めパスタとして、チェターラ風スパゲッティを頼んでみた。
チェターラで、シェフがある店の賄いを食べて感動したというパスタである。
写真でご覧の通り素パスタであるが、ただの素パスタではない。
素パスタのコラトゥーラ和えなのであった。
ああまたワインを一本あけちゃうぜい。
店は今月いっぱいで締めちゃうという。
しばらくたったら近くで、もっと小さい店をやるというので、必ず行くね。
豆部部長というおじさん二人で行っても許してね