湯島「シンスケ」

「シンスケ」の肴は、整っている。

食べ歩き ,

「シンスケ」の肴は、整っている。
銀杏塩焼きの殻の置き方。
ほうれん草胡麻和えの胡麻衣のかけ方、ゴマの散らし方。
ブリ塩焼き串の、大きさの揃え方。
刺身盛り合わせの魚の盛り方と生姜の切り方、ツマの配置方法。
きつねラクレットの青ネギの配し方。
お新香の、もってのほかの盛り方とキュウリの半分まで入れた、隠し包丁の精妙さ。
海老しんじょうの正確な四等分と、ピーマンの寄りかからせ方。
どの肴が運ばれても、ハッと胸を突く美しさが潜んでいる。
こういう肴で酒を飲めば、背筋が伸びる。
そこには、「盛りつけとは飾りではない。心をこめること」という志が、静かに沁みていた。
店主矢部さん曰く
温泉旅館ではなく、銭湯の心地よさを目指しております。乱雑ではなく、かといって整いすぎるでもないように、今後とも心がける所存です。