こういう若者が、日本料理を背負っていってほしい。
素直にそう思った。
銀座の割烹他で15年修行し、36歳で去年開業した。
店主一人、手伝い一人の小さな店である。
訪れた日は、他に客が無く、僕一人の貸切だった。
それなのに他の席には、一人客を慮って、お敷きと箸、ひざ掛けがセットされている。
昨今は36歳で独立開業することは珍しくない。
若いゆえに勢いが料理に出るが、意欲が出過ぎることが多いように思う。
彼の料理は地味とはいえずとも、静かであった。
毛蟹の飯蒸に始まり、石川小芋、八色椎茸の焼き物、京都田鶴さんの上賀茂唐辛子の焚き物など野菜料理が心をとらえ、珍しい味噌漬け太刀魚の揚げ物は、朴訥なうまさがある。
最後のご飯が白ごはんというのもいい。
様々な炊き込みご飯を出して喜ばれる店もあるが、それまでの料理が台無しになってしまう。
「招福楼」のご主人から聞かされた教えである。
おかずは、じやこ山椒、ひじきと牛蒡煮物、生たらこ、小さな塩鮭、胡瓜の糠漬けと茄子の糠漬け,しば漬けと牛のすき焼きであった。
ひじきと牛蒡煮物tは極細の切り方がよく、じやこ山椒とともに、ご飯を食べるには、淡い味付けである。
そのことを察知したのか、ご主人は言われた。
「すき焼きがあるので、普段より薄味で炊いています」。
そう言って通常の濃く味付けしたじゃこ山椒もだしてくれる。
その気配りが嬉しかった。
甘味のわらび餅も上出来で、お茶に合わせて甘味を弱めてある。
優しさとは、味が弱いことではない。
食べる人のことを思い、計り、味や食感を決めていくことである。
店の名を「三田ゆうみ」という。
「ゆうみ」は人の名ではない。
それは、ご主人が目指す料理の姿、「優味」を指している。









