春の「小川はな食堂」

食べ歩き ,

そこには、何百回も作ってきたものだけが持つ、揺るぎない味の深みがあった。
味が際までしみた蒟蒻。蛤のエキスの力強さ。おしたしとは何かを問う小松菜。甘辛く、しみじみとしたうまみで燗酒を恋しくさせる玉子焼きや煮ヤリイカ、数の子の煮物。凍み大根の煮物や独活酢漬けの味加減。きりりと仕事が決まった刺身のつま。
そして、魚たちのことを我が子の様子のように話し、料理する、小川さんの魚料理。
どれも、写真映えする料理ではない。 だが
この味を知ることは、大人の成熟だと思う。
この味に喜ぶことは、粋への体得だと思う。
そのために、今こそ食べなくてはいけない。
江戸料理家うすいはなこさんと築地魚河岸三代目小川貢一さんによる「小川はな食堂」は、虎ノ門横丁のポップアップにて一昨日から始まり、月末までやっています