西麻布のビルの二階にひっそりと構える。薄暗い店内の中で、カウンターに灯りが当たる。向き合う厨房の中で腕を振るうは、ユーゴ ペレ ガリックスシェフ。
京都「菊乃井」で2年、銀座「エスキス」で7年修行し、今年四月に店を出した。
料理は一見、フレンチと日本料理の融合的創作料理に見えるが異なる。
「エスキス」同様、日本の食材をフランス人の感覚で捉え、日本人の気づかない新たな魅力を引き出した、我々の知的好奇心をくすぐる料理である。
★自家製カラスミと大根のミルフィーユから始まった。
★スミイカで加賀太胡瓜を巻き、黒ニンニクペーストでアクセントした料理。質の高いイカの甘みと胡瓜の香りが呼応し、ペーストの強さが食欲を刺激する。
★京都よりの加茂茄子は、胡麻とマスタードのソースと実山椒を添えて。胡麻とマスタードの出会いがよく、ナスの味によく合う
★氣分の棒ずし。三重県のごまさばの寿司で、茗荷としそ、胡麻を挟み、防風の胡麻和えを添えて。なにより鯖鮨として日本トップレベルの美味しさ。
★北寄貝。さっと加熱した貝に、茹でた枝豆と貝のフォンとクリーム、発酵させたパッションフルーツのジュ、アンチョビとパセリ 柚子の皮を合わせて。
パッションフルーツの甘酸味が貝の甘みと出会い、エキゾチックさを生み出す。この辺りも他にはない、シェフの優れた特異性である。
★白エビ。揚げた白エビと、蓼と酒粕のクリーム、スモモをあわせて。
酢の物のイメージで作ったという逸品。
★白アマダイの蒸籠蒸し。
ハーブ類と蒸し、ガルムとオレンジのエキスを塗り、マジョラムのクリームソースを合わせてある。
面白いのは、添えたブラッドオレンジの冷たいクリームで、熱い魚と冷たいクリームを合わせると、優美な空気が流れ出す。シェフの面目躍如。
★肉は、塩麹とジンとレモンで一日マリネしたという、金華豚。
味が丸く色気を増している。
★デセールは梅。
★優美なチョコレートとトンカ豆のタルトなど。