荻窪「ててて」〜日本酒がおいしい居酒屋1〜

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普通居酒屋で酒のメニューを開くと、まずビールやハイボールなどがあって焼酎に続き、次に冷酒の銘柄がずらりと書かれ,最後に燗酒が三種類ほど載せられていることが多い。しかしこの店で初めてお酒のメニューを見たとき嬉しくなった。1ページ目は、「燗」というページで、銘柄が多く載っている。次のページに、冷酒があった。

しかも燗酒にしてうまい酒が、ずらりと並んでいるではないか。群馬泉、月の井、奥播磨、竹鶴、天穏など、燗酒好きにはたまらない13名柄である。しかも右から左に行くに従って、次第に濃い酒になっていく。

ルビがふってあるのもいい。日本酒の詳しくない人だと,なんて読むのかわからず頼みにくいうえに、十旭日を「じゅうあさひ下さい」と頼んで,「じゅうじあさひですね」なんて返され,恥をかく。店主は,日本酒を愛しているんだなとつくづく思うラインナップである。ある日は

月の井に始まり、奥播磨に行って、十旭日、天隠とお願いした。美人女将がつける燗づけの温度は、ぴたりと決まって,幸せがぐんぐん膨らんでいく。ご主人が作る肴類も、酒飲みの心のツボを突いてくる。

まずは秋田県南地域で知られる野菜「ふくたちのおしたし」、「ホタルイカ沖漬け」で1合は呑めよう。鮮度の良さと包丁の切れが光る「キンメダイ、アジ、メジマグロお造り盛り合わせで1合。さらに酸味のたたせ方が潔い、「さごちの南蛮漬け」と、柑橘の香りと甘酸味、クレソンの苦旨味の取り合わせが絶妙な「八朔と天然クレソンの白和で1合。

木の芽の香りの中で竹の子の甘味が光る「たけのこの木の芽和え」と、胡麻,ハム,玉ねぎが入り、芋の甘みが生きた、「ポテトサラダ」で1合。

「蕎麦の実揚げ」と「炒り醤油豆」をちびちびと食べながら、1合。

カブ,白菜,きゅうり、2種類の人参が盛り合わせられた、女将の糠漬け」や「冷奴」。あるいは、「ハムカツ」や「天然野芹と三つ葉のかき揚げ」といった揚げ物もいい。燗酒好きなら長く通いたい店である。