南草津「セジール」

煮込むという才覚。

食べ歩き ,

「いろいろ入れて、ただ煮込むだけです」。
そう彼はいうが、煮込みにも才能がある。
「リボリータ」は、「カーボロネロだけだと高価になってしまうので、かぶや大根の葉を入れました」と、言う。
くたくたに煮込まれたそれは、青い甘苦さがあって、ミネラル豊かな大地の香りがする。
ビエトラ入れなくても、まんまイタリアの味である、
金時豆、ひよこ豆、白インゲン豆の取り合せとセロリやにんじんの取り合わせもピタリと決まって、いい意味で田舎臭さがありながら、英絵あんの美味しさがある。
「近江牛トリッパの煮込み」にもやられた。
ハチノス、ヤン、ギアラの煮込みである、
白インゲン豆の甘みの中で、胃袋たちがそれぞれに自分たちの持ち味を発揮する。
サカエヤの新鮮なモツであるから尚更ながら、脂の甘みや香りやら溌剌とした食感が次々と弾けて、楽しいったらありゃしない。
トマトの旨みに逃げない、ビアンコというのもいい。
モツ本来の風味が生きている。
パスタも野菜の煮込みだった。
フリアリエリ・コン・サルシッチャ、菜花とサルシッチャのパッケリである。
大量の菜の花を40分煮込んだだけです」と、いうが、しみじみとうまい。
ほのかに土臭い煮込みの甘みとサルシッチャのハーブ香が響きあって、胸が高まる。
野菜の底塚らに包まれて、パッケリが喜んでいる。
毎日食べても飽きない、暖かさと力強さがある。
その魅力こそがイタリア郷土料理そのものなのだ。
溝口シェフの煮込み