満月のワイン。

食べ歩き ,

満月にはパーマをかけない。
せっかくかけたパーマが引っ張られるから。
そのワインは満月に生まれた。
スロベキアの南のたった18haの畑で。
樹齢を重ねた葡萄を摘み取り
そのまま樽に入れ、
つぶしもしない。
圧縮もしない。
葡萄は自重でゆっくり液をにじませ
じわりじわりと醗酵する。
次第に液が満ちてきて、
さあ今夜あたりが満月だ。
樽を開けるとどうだろう。
満月の引力に導かれ
液がすうっと登ってくる。

その上澄みだけをすくって
慎重にボトルにこめる。
そうして生まれたのがこのワイン
「LUNAR」。
飲めば、おお不思議。
穢れなき朝露のように
純朴な山奥の湧き水のように
舌をころりと転がって、
静かに体に入っていく。
のどもとに落ちることなく、
舌やのどにに染み込んで
全細胞にゆっくり
時間をかけて、浸透してゆく。
雑味なく、どこまでも丸く、暖かい。
沈黙の中に雄弁なうまみを含んでいるが、過剰じゃない。
同席した
アカザ海老も
アスパラも
プンタレッラも
そして我々も
喜びに溢れて、
満月の、自然の畏怖にひざまずく

 

パーレンテッシ