三陸産雲丹と白海老のゼリー寄せには、藏すりが乗っていた。
藏すりとは、木の芽と生姜味噌で蕨を擦り下ろしたもので、秋田の郷土料理だという。
擦って出たぬめりと、白海老の肉体、ウニの食感が共鳴して、色気を醸す。
ウニの純粋な甘みと白えびの濃厚な甘みに、山の香りが吹いて、気持ちが晴れていく。
体の中に海と山がい渦巻いて、浄化されていく手応えがある。
最後に秋田での食べ方と同じように、少しだけご飯をもらって、かけてみた。
こりゃたまらん
大根餅ならぬ蕪餅とキャビアである。
蕪餅はクセのないタピオカ粉でつないのだという。
蕪の穏やかな甘みが舌にとろんとしなだれて、キャビアの塩気が主役の甘みをそっと際立たせる。
じわりと心が、優しさで包まれた。
アスパラの春巻である。
秋田県南部、羽後町のアスパラだという。
カリッ。
春巻の皮が破れると、熱々のエキスが飛び出してくる。
甘く、香り高く、勢いがあって、口の中を初夏が舞う。
土の中内にいるアスパラを、そのまま加熱したような、命の発露があって、これはアスパラの料理として最適かもしれない。
そこへふわりと、トリュフが薫って、艶を膨らませる。
ウニ、キャビア、トリュフ。
単に高級食材を使っているのではない。
高級食材も素朴な食材も同じように敬意を払い、組み合わせる。
だからどれも新しい出会いがあるのだが、どこか懐かしく、温かい。
麻布台ヒルズ「たかむら」