流れる時間

食べ歩き ,

流れる時間が違っていた。
緩やかに時が刻まれている。
てらいのない、温かみのある空気が頬を撫でる。
調味料やスパイスは、出番を待ち、鍋や蒸籠は、火にかけられるのを楽しみにしている。
ジョンハーバーの歌声が、ソニーハウスのスピーカーから流れ、ピアノは叩かれるのを心待ちにしている。
原川さんがワインを注ぐ。
そして片隅の大鉢では、さあ食べろと言わんばかりに、野菜が天に葉を伸ばし、根菜は無骨な肌をさらし、命を滴らせていた。
長崎県小浜「BEARD」にて。