初めて出会う食材が、年々減ってきている。
日本中、世界で、幾多の食事をしてきた。
初めて食べる料理はあっても、初めて食べる食材は少ない。
去年も数点くらいだろう。
今まで最も多かったのはペルーを訪れたときで、数えてみれば50品目も新しい食材に出会った。
だが東南アジア各国に行っても、せいぜい10数こくらいだったろう。
ところが先日、日本で食べた食事は、初めて食べる食材が20もあった。
一回の食事である。
正確に言えば、ほぼ加工食材で、初めて食べる食材は4つである。
クリケット (ヨーロッパイエコオロギ) 、ゲノム編集したトマトのシシリアンルージュハイギャバ、同じくゲノム編集して陸上養殖をしたフグ。それに蚕である。
その他、ファオアグラ、キャビア、ウニ、海老、ミルク、卵、生クリーム、バター、チーズ、ラード、翠茎茶、ジャックミートなどであった。
翠茎茶、ジャックミート以外、何が目新しいの？ と、思える品々だろう。
しかし全てが植物由来、豆由来、果物由来などで作られた食品なのであった。
正直これらの食品の進歩に驚いた。
「仕方なく」ではなく、従来の食品に限りなく近く、言われなければ、いや言われても違いに気がつかないものもある。
宴の名は「世界一美味しいサスティナブルフード」と名付けられていた。
大仰なタイトルだが、ウソはない。
つまり持続可能な動物由来ではない食品やゲノム編集をした食材、環境に負荷をかけない食材を組み合わせて作った料理のコースは、おそらく世界でも初めての試みで、こういうタイトルをつけたのだという。
どれも食べて「無理矢理感」がない。
自然に美味しい料理としての着地がある。
それも井口和哉シェフのしなやかな感性があってこそだろう。
一つだけ料理を挙げるとしたら、彼の得意な野菜のエチュベである。
「旬の野菜と発酵コオロギ」と題された皿は、的確に加熱された週種類の野菜の上に薄茶色のソースがかかっている。
野菜の甘みに、ソースのコクと香ばしい香りが加わって、生気が溌剌と立ち上ってくる。
そんな料理だった。
野菜の加熱具合の精妙さもさることながら、ソースには豆のバターと発酵させたクリケット (ヨーロッパイエコオロギ)の粉末が使われているのだという。
シェフが言う「発酵させて見たのですが、とても食べられない匂いになってしまいました。でも試しに炒めて見たらなんと香ばしくなったのです」。
試しにそれを食べて見た。
焦がし麦の香りがして、実に香ばしい。
味は、エビの殻といった感じで、天ぷら屋で揚げた海老の頭を想像して欲しい。
米ぬかを食べさせて養殖しているため、味も栄養価も高いらしい。
ただの昆虫食ではない、ここにも一つの進化があった。
テーブルには、初めて出会う食材や食品に関する説明書があり、一つずつコピ-もつけられていた。
気に入ったのは二つ。
「背徳感のない豆乳バター」と、
最も良いのは
「ガチョウやアヒルが泣いて喜ぶフォアグラ」。
世界一おいしいサスティナブルフード
1 トマト、キャビア、 蕗の薹
HOBOTAMA 加熱用液卵風、シシリアンルージュハイギャバ
ヴィーガンキャビア 、NEXT ミルク 、ソイレブール、マメマージュmou、エディブルフラワー
植物性チュロス
ゲノム編集トマト ジャガイモのガレットは、発酵トマトで味付け。シートもトマト水
2マイコプロテイン、チーマディラーパのすり流し
[#21] マイコプロテイン きのこの根っこから作った 揚げ出しくず豆腐
発酵ジュース いちじくの葉っぱ チーマディラーパ
3 豆のバターエチュベ
クリケット (ヨーロッパイエコオロギ) 、ソイレブール、HOBOTAMA 加熱用液卵風
4 サスティナブル・エビの腸粉､ベースミートの芋角
HOBOTAMA 加熱用液卵風 、Sエビ (サスティナブル・エビ)、Vege白湯N [#18] ユニショートMJ、 マメマージュ、すじ青のり 、 みりん 、 若ひじき
ソイレブール、コクリーム
5 フォアグラ、小玉レタス、 金柑、 干し柿
ヴィーガンフォアグラ ソテーしたレタスと干し柿 コニャック
小玉レタス 、NEXT ミルク、レタスのチップス、金柑のジャム、カシューナッツ、金柑の皮
6 ジャックフルーツ、木の芽バター、筍の古漬け
ジャックミート 、ソイレブール
7 熟成河豚のロースト、 焦がしブロッコリー
22世紀ふぐ 、ソイレブール
8 斧、発酵菊芋、雲丹
大豆類、 Vege白湯N 、Plant Based ペーストS うに風味
9 翠茎茶、柿
翠茎茶 、NEXTミルク 、HOBOTAMA 加熱用液卵風
廃棄されるアスパラの根元を干して焙じた茶
10 パッションフルーツ、 晩白柚
コクリーム/ソイレア 、マメマージュ
11 蚕
SILKFOOD シルクフードペースト、ソイレブール