不易の味。

食べ歩き ,

創業昭和3年。
多くの名士を魅了してきた味とスタイルは、今も変わらない。
多くの割烹がコースで提供するのに対して、好きなものを好きなだけという方式を、今も貫かれている。
客本位なのである。
お客さんのために、用意する料理は幅広い。
付き出し、お造り、吸い物、焼き物、煮物、酢の物とあり、その数は、59種類もあり、食事は11種類用意される。
昨夜は、銀座が華やかし頃に活躍された、クラブのママに誘われて、久しぶりに出かけた。
突き出しは、フガの煮凝りと胡麻酢和えで、これだけですでに、酒一合やってしまった。
特に胡麻酢和えは、京都の「浜作本店」でも出される昔ながらの料理で、クラゲ、胡瓜、椎茸をあえ、それぞれの仕事と利用のバランスが見事に整った料理である。
お造りは、ヒラメとオコゼの薄造りと赤貝を盛り合わせてもらった。品のある甘みを流すヒラメと、シコっとした食感からしぶとい甘みを感じさせるオコゼ、香り高い赤貝の組み合わせが良く、酒が進む。
続いて「ここのウニは美味しいのよねえ」と、言われ頼んだ生ウニである。
見事なウニで、また1合飲んでしまった。
さらに松葉蟹をいただき、沢煮椀をおねがする。
こちらの沢煮椀は、関西割烹らしく、椀種がこれでもかと入れられて、酒を飲めえと誘ってくる。
最後は青菜の煮浸しをいただく。
このような、何気ない、高級食材でもない料理にこそ、力がわかる。
ただの春菊がなぜここまでおいしいのか。
また嬉しくなって酒をおかわりした。
もう4合目である。
そして4合目のために、このわたをお願いする。
ちびちびと舐めながら、盃を空にする。
食事は、このわたを半分残しておいてご飯を一口もらい、乗せて食べた。
それを頼むと若女将が、「私はお酒はいただかないのですが、このわたをご飯にかけて食べるのが好きなんです」と、笑われた。
今夜も浜作は、紳士と淑女が集い、どの方も、相好を崩し、心からくつろいで、好きなものを食べ、飲み、談笑している。
ここは大人の幼稚園だ。
銀座「本店浜作」にて。