自由を受け入れてくれる店

食べ歩き

「今夜は331だな」
「はい、前菜3皿にプリモ3皿にセコンド1皿ですね」。
「お飲物はいかがしましょうか?」
「飲み放題コースでお願い」。
「はいわかりました」。
飲み放題コースなんてない。ないが即答して、安いワインをガブガブついでくれる。
331なんて、初めて言ってみたが、直ちに意図を理解してくれる。
ある日は、今日のスペシャルの説明を聞いた後で、メニューを閉じて言ってみた。
「どれも美味しそうだね。ところで今日はこれ以外に何ができるの?」
この問いにも即答だった。
メニューに書いていない料理を、何品か上げてくれる。
またある日は、
「ナポリタンできる?」と聞いてみたら「はい」と即答し、この上ないナポリタンが現れた。
阿部、米津時代からここな最強のレストランである。
先日も訪れてバンコに座り、初めてつくサービスに言ってみた。
「今夜も飲み放題コースでお願い」。
「はい、かしこまりました。泡からでいいですか」。
伝統は受け継がれていた。連れが聞く。
「飲み放題コースなんてあるんだ」
「いやないよ」。
料理もその日の気分で変えてみる。
先日の場合はこうだ。
「前菜は、タコとひよこ豆、ブロッコリーのミニサラダを頂戴」。
「後温前菜で、セコンドにあるフリットね」
「パスタは何にしようかな。そう今夜はシンプルがいいな、メニューにはないけどトマトソースをスパゲットーニでね。あともう一つはショートパスタがいいから、去勢鶏とかぼちゃ、リコッタのカヴァテッリにしようかな、セコンドは後で考えるわ」。
といった布陣でガバガバ飲む。
トマトソースのスパゲットーニがうまい。
バンコの窓から厨房の石川シェフに親指立てて、ほっぺを指でクリクリやると、シェフをも親指立てて返す。
食べ飲むうちに、もうセコンドはいいわという雰囲気になり、
「二種のカポナータの揚げなすのほうをちょうだい、それからボンゴレビアンコ作って(メニュー外)」と頼む。
そして最後は、ドルチェはやめてチーズをもらう。
ここは自由がある。自由を受け入れる度量がある。
いい店とは、自由を受け入れてくれる店である。
ドンチッチョにて。