四谷荒木町「大原」

啓蟄。

食べ歩き ,

蓋を開けると、春がいた。
霞がかかった春の小山がある。
蛤のしんじょうは、固まる際で固められており、汁を一口飲んだ途端、滋養が体の隅々へと降りていった。
少し焦げ目がつくほどに焼いた、菜の花は、春の強さを表している。
「はぁ」。
「はぁ」。
同席した人たちが漏らす、充足のため息が、静かな店内にこだました。