山形「出羽屋」

自然への畏怖。

食べ歩き ,

森の声を聞く。
樹々や土、空気や水の鼓動を知る。
自然への畏怖を感じ取る。
「出羽屋」では、皿の一つ一つから,普段都会にいては窺い知れぬ、山の神秘が叩きつけられる。
深山に生息する、動物や鳥、魚や植物の澄んだ呼吸が舌に滴り落ちる。
やがて眠っていた内なる野生が揺り動かされる。
例えば、天然の百合根は、有名な栽培百合根ほど甘くない。
だがその本来の甘みは,土に染みいる朝露のように、ゆっくりと体に浸透し、感謝の念を目覚めさせるのだった。
キノコの想像を超えたうまみが溶け込んだスープが、歯の先に伝わる苔の繊細な食感が、塩漬けした山菜の生のようなみずみずしさが,干したとは思えない豆のふくよかさが、あらゆる感覚を浄化させる。
そうして人間の無力を思い知る、
だからこそ、ここでの味わいは、心に深く刻み込まれるのである。
山形「出羽屋」にて。
それぞれの料理については,また後ほど。