海月。

食べ歩き ,

僕がキュレーターを務める、福井の食ツアー第一弾が始まった。

小田原や長野、富士宮やアメリカから来ていただいたお客様に紹介したのは、寿司屋「海月」である。

都会からの旅する僕にとってに、良き地方の寿司屋の条件は、三つある。

第一に、地元の魚を知り尽くし、肴や握りにして出してくれることにある。

いくら素晴らしい魚でも、豊洲から仕入れていますでは、地方の寿司屋に行く意味がない、

第二に店主の人柄だろう。

別の地から来ているわけだから、すぐには馴染めない。

しかしそれを察して、緩やかに溶け込むような心遣いをしてくれる店がいい。

第三に地元の酒を熟知していて、愛し、薦めてくれること。

やはり郷に入れば郷の酒を飲めである。

この店はまさにそれを体現していた。

昨夜も寿司には欠かせない、マグロもいくらやうに、車海老や穴子も出なかった。

すべて福井の魚介を使うからである。

時折冗談を交えながら料理の説明をしてくれる、ご主人郷さんとの会話も楽しい。

そしてペアリングされる福井の日本酒に惚れて、ベロベロとなった。

それでは昨夜いただいた料理と握りを紹介したい。

 

 ▲乾杯は、黒龍の希少な泡酒、エシコトで。

★九頭竜舞茸すり流し

 福井県大野市の厳しい寒さと清らかな水、空気に恵まれた環境で栽培された黒舞茸は、風味が豊かである。

ほのかな甘さと森の香りが漂い、「ああおいしい」という言葉が、自然に漏れ出る

 

 

★手巻き寿司

ソウダガツオのたたき、たや農園飲ミニ青梗菜を海苔で巻いて。

鉄分の旨みと青菜が合う

 ▲超 常山  純米辛口

 

越前町のすがもと汐雲丹のしゃり粥

福井県などの岩礁域に生育する海産種子植物。

海藻のようだが異なり、花を咲かせ種子を作る。

細長い葉は、パリパリとした食感で、磯の香り高く、甘みが強い。

そんなすがもに、シャリの酸味と甘み、汐ウニの塩気と練れた旨みが加わって、食欲を刺激する。

 

★底引きのハタハタ握り

煮る焼く揚げるなどは食べたことがあるが、生のハタハタは珍しい。

噛めば、ブリっとして、ほの甘い。

噛むほどに焦ったい旨味が出て、色っぽくなっていく。

昆布と塩で脱水させてから軽くあぶって、握る。

 ▲花垣ひやおろし山廃本醸造生

 

 

★若狭マハタ造り 梨醤油

若狭で養殖されるマハタを少し炙って山ウニと出汁醤油に梨を合わせた

タレで。

透明感があり白身と赤身のコントラストが美しい。

甘みとクイッと歯に食い込む歯応えが魅力的。

 

★越前あんこう煮込

福井県越前町で水揚げされるあんこうの七つ道具。

様々な食感が楽しい。を指す

なんとそら豆から作ったという、優しい自家製豆板醤を混ぜて。

全国の寿司屋で自ら豆板醤を作っているのはここだけだろう。

 

★かんばち握り

しこっと噛めば、しなやかなうまさが広がる。

 

★甘鯛焼き 金時草と揉みわかめ、グリーンファーム蓮根

上品で色気のある甘み。

そこに合わせたのがひれ酒である。

フグと同じく、甘鯛のヒレを干して燗酒に入れたもの。

このヒレ酒がいけません。

 

★バイ貝握り

 コリコリとした食感の中から淡い旨み滲み出る

愛知山海岸志野さんの「百笑の塩」で

 

★九頭竜鮎の真砂和え 青七味も入れて

水量が多く、流れが強い九頭竜川で育つアスリートの子持ち鮎の身を焼き、卵をあえた料理。

鮎の淡い旨味を卵の旨味が持ち上げる。

青七味は、青唐辛子、青柚子、大葉、青大豆、昆布などを混ぜ合わせて自家製。

爽やかな香りと辛味が、たで酢効果と同じく、川魚の勢いを演出する。

 

そして添えられた茶色の液体状にものが危険である。

肝や骨、ヒレなどを煮付けてドロドロにしたもので、この小鉢一杯で酒が3合は呑めてしまう。

▲一本義の燗酒

 

 

★葉っぱ寿司

アブラギリ(油桐)というトウダイグサ科の落葉高木の葉で酢飯と一緒にマス、しょうがなどを包んだ永平寺町周辺の「郷土寿司」。

保存性と香りの良さからアブラギリが使われているが、今回はアカメガシワで。

中には、2日間ヅケにした鯖にハラペーニョである。

青い魚にハラペーニョの辛味と香りが実に合うのだな。

 ▲早瀬浦 限定吟醸生酒

 

★赤エイ肝和え越前町 クレソン 地芥子。

エイはフレッシュで肝は一週間寝かせて醤油麹と合わせて

淡白な白身に着物旨みが絡んで、酒が進むことこの上なし。

 

★キングサイズ甘エビ握り

なんと大きいのだろうか。こんなサイズを見るのは初めてである。

「肝は焼いた方が美味しいと思います」と、殻を焼いて中から肝を搾り出す。

焼けた甲殻類の香りに、ねっとりと舌の上でつぶれる甘海老の身肉、そこへ濃厚なエビ味噌の旨みがしなだれる。

 

 

★青パパイヤのきんぴらカツオ風味

こりっとした食感、甘辛味が合う

 

★三方五湖モクズ蟹ご飯 本葛 熊川宿

地元でとれる葛で餡にした、蟹ご飯である。

優しい蟹の身の甘み、卵のうまみがご飯と一つになる。

紗利 毛利酒造 魚に合う

 

★さわら握り

脂が乗った、腹の握り。

脂がエロい。

 

★レンコダイ酢締め握り

しなやかな身から、品のある甘みが溢れる

 

★アオリイカ握り

切れのいい、いなせな甘み

 

★味噌汁

魚や野菜のクズで出汁をとったのだという。

しみじみと美味しい。

 

★巻き寿司

漬物、きゅうり、玉子焼き、谷口屋の厚揚げを巻いてある。

 厚揚げの巻物は初めてだが、なかなかいけるじゃありませんか。

 

 

★卵焼き