新宿「つな八」

春に深々と感謝する。

食べ歩き ,

ようやくが来ましたね。

東京でも、ウグイスが鳴き、梅の花が咲き出しました。

この季節は、冬に甘さを蓄え、空に向かって伸びんとする、野菜が愛おしい。噛めば、切なさがあって、どうにも好きなのです。   

そんな春野菜を生かすのは、天ぷらに限ると思いませんか。

僕は、栃木県海老原ファームの野菜を使った天ぷらを食べ、そのことを教わりました。

野菜ごとに与える水の量を厳格に管理した海老原さんの野菜は、力強く甘い。

それらを天ぷらにして、風味を膨らますのですから、たまりません。

エグミがなく、わさび菜のような香りが放たれる芽キャベツ。

うま味を伴った、しぶとい苦みがある黒キャベツの若芽。

ほのかに甘いニンジンの葉や、濃密な甘みがほっくりと崩れゆく人参。

スナップエンドウは、青々しい香りと甘みが弾け、さやの内側と豆が溶けるように甘い。ア

スパラの根元を齧れば、とろりと甘い液が、流れ出る。

食べるほどに、慣れ親しんだ野菜が放つ、知らないたくましさに、驚かされます。

そこには、息吹とはこれだ! と、叫びたくなる凛々しさがあって、春に深々と感謝するのです。