海に下ったヤマメは

食べ歩き ,

海に下ったヤマメは、昆虫食から脱して、イワシの稚魚などを食べはじめた頃だろうか。
出始めのサクラマスは、脂という艶をようやくつけはじめた気配を、舌に漂わす。
塩と昆布で〆たというサクラマスが、酢飯と抱き合い、じっとりと脂を滲ませる。
そのほんわりとした色気がたまらない。
鼻に抜けていく、桃色の香りがじれったい。
そして、春の陽だまりが胃袋に落ちていったような余韻残して消えていく。
富山「鮨人」にて。