僕が軽井沢で魅かれる店は、結局、東京や他県では出会えない店なのかもしれない。
だからもっとおいしい店もあるかもしれないけど、「小楽」や「無限」にいってしまう。
まあそば通は顔をしかめるかもしれないけど「かぎもと屋」も、軽井沢にしかない味である。
有名なフレンチやイタリアン、鮨やそば屋、割烹にも行ったけれど(まだ行っていない店も多いのでわからないけどね)、どこか東京の質と比べてしまう嫌みな自分がいて、軽井沢まで来てわざわざという気分にはならない。
そういう意味で、「ラ・モンタニョン」は、東京にはない。
いや、恐らく、日本のどこにもない。
フランス仕込みのシャルキュトリーとその料理の店と言えば簡単だが、フランスには数多くある店が、まだ日本にはない。
豚バラ肉の皮付き香味揚げがたっぷり乗った、リヨン風サラダは、豚の脂身のうまさとサラダのビネグレットの具合が、ピタリとあって惚れ惚れさせる。
手間がかかるため、東京でも出す店が少なくなったカスレは、鴨のコンフィでなく、アイスバインとソーセージが入っている。
豚の脂とコラーゲンの甘みを吸った白インゲン豆に、笑いが止まらない。
以前紹介した「シュークルート」だって、こんなにたくさんのソーセージ類や豚すね肉が入っているシュークルートは、東京のドイツ料理店でもフレンチでもありえない。
数多く入っていることによる複雑さが気分を高揚させ、ザワークラウトの優しく深い酸味が食欲をあおる。
鉄分を感じさせる濃い味の、マンガリッツァ豚ソテーを食べ、〆はナポリタン。
日本全国、いや世界中でここだけにしかない、各種ソーセージ入りのナポリタンは、フェンネル、クミン、ナッツ香、燻製香等など、様々なソーセージに込められた魅惑的な香りと単純明快ケチャップ味が融合する、不思議な不思議なナポリタンなのである。
それは、妖艶な女性が無垢な子供と遊んでいるような、ナポリタンでもあった。
また来よう。
東京では味わえない、豚肉の至福に、また会いに来よう。
僕が軽井沢で魅かれる店
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