今年最後の次郎。
本日おかわりをお願いしたのは、シマアジとコハダだった。
今日のシマアジは、いつものような、クリッとした食感から、上品な脂が滲むような感覚ではない。
淡い桃色を帯びた姿体はしなやかで、すうっと歯が包まれる。
口の中で身をよじりながら酢飯と舞い、気品あるあまみを、そっと舌に乗せてきた。
その気配が、なんとも色っぽい。
エレガントな余韻を残して、喉に落ちていく。
食べた後も、しばし、うっとりと宙を見つめてしまう。
もう一度、あれは幻ではないことを確かめたく、おかわりした。
コハダは、いつもよりしなやかでありながら、酢が効いて、喉をクッと鳴らす。
今年最後の握り寿司は、コハダで締めくくりたい。
そう思い、お 願いした。
喉に響き残る、コハダ の陰を、いつまでもいつまでも反芻しながらご主人に挨拶し、数寄屋橋を後にしたのだった。
銀座「すきやばし次郎」にて
