「砂糖は使わない。調味料もできれは使いたくない」。
それがウーさんの料理である。
「クラゲとたたき胡瓜ゴマ風味」「翡翠ナス」「赤と黄色パプリカの豆豉風味」「イカとカブのあえもの」「皮蛋豆腐」「生搾菜と枝豆の和物、山椒油風味」。
どの料理も、素材が輝いている。
シンプルな味付けだから、普段より注意深く耳を澄ませば、素直な野菜たちの声を聞くことができる。
「料理には住む家があると思うの。フカヒレだったら誰も器を見ない。でも冷奴みたいな素朴な料理は、いい家に住まわさなければいけない」。
エビはフレッシュトマトの優しい酸味と甘味の中で微笑み、炒飯は、穏やかで軽やかに口の中で解けていく。
そして名物の小麦粉料理である。
いかにも簡単そうにやられるが、薄く、強く、もっちりとしなやかな春餅。
瞬く間に包み込んで伸ばす、幾重にも重なった皮の甘みと肉餡のうまみか、口の中で出会う、肉餅。
そして最後は、「炒め料理は煮込み料理ではない。鍋はサラダをあえるときのボウルね」と、軽やかな手つき炒めて、羊肉の旨味、香菜の茎の食感、ネギの香りか生かした「ラムのクミン炒め」。
たくさんいただいたが、お腹はすっきりとして、思い出すと心が温かくなる。
そしてまた、無性に恋しくなる。
それがウー・ウェンさんの料理だ。