〜弱弱しいたくましさ〜

食べ歩き ,

「季節だからカルチョッフィが食べたい」というお願いに、優しき奥野シェフは、応えてくれた。
山盛りのカルチョッフィを両手に持って現れると、
「少し時間をください」と、言う。
そいつを丸ごと、60度で40分コンフィにし、170度で揚げた。
目の前では、半分に切られたカルチョッフィが湯気を上げている。
「あっちち」と、手にとり、ガクを一枚ずつはがしながら根元の肉部分をしがむ。
可食部分は小さいが、ほのかな甘みに目を細める。
そうして残った芯部にかじりつく。
ほくほくとして、やんわり歯が入っていく芯部は、固いガクに守られてひっそりと眠るものが持つ、はかなさがある。
弱々しいたくましさといおうか。
それって一体なんだと言う表現だが、淡い甘さと淡い青臭さ、淡い淡い苦みのようなものが広がるのだが、その中に植物としての”したたかさ”を感じるのである。
「イタリアで片っ端からカルチョッフィを処理していると、アクで手が真っ黒になっていしまいます」。昔吉川シェフが、そう言われていたことを思い出した。
アクの強い野菜が内に秘めた、優しき味わい。
人々はその二面性に惹かれてきたのだろうか。