「ollaオジャ」

食べ歩き ,

おじやの語源は、煮ているときの音が“じゃじゃ”と静かな音を立てているところから、「じやじや」に、接頭語の「お」をつけた元女房詞という説がある。
一方で、スペインには、「ollaオジャ」という鍋を使った鍋料理があり、この鍋で米をおじや状態に煮込んだ料理を、そのまま「オジャ」という。
日本に来たスペイン人がこの料理を伝えて、おじやの語源になったという説がある。
しかしこの説は、「天ぷら」のポルトガル語語源説同様、怪しい。
おじや状の料理は、縄文時代後期には作られていたはずだし、その料理名が16〜17世紀になってからスペイン料理の名にとって変わったというのは無理がある。
また女房詞がついた言葉が、スペイン語由来というのもおかしいように思う。
さてその「ollaオジャ」だが、開店したての京都「KOKE」でいただいた。
シェフは32歳の中村有作氏で、長く「カ・セント」でスーシェフをやられていた方である。
インゲン豆とハモンセラーノのオジャは、トマトの旨味とスモークパプリカの香りが底味を持ち上げて、しみじみとおいしい。
できることなら、鍋に入っているオジャを全部一人で食べたい。
素直にそう思った。
なにより気に入ったのは、その整えられた優しいバランスである。
トマトやパプリカや生ハムを使っているが、その旨みに頼り過ぎていない。
米と豆の持ち味が生きるよう、味が整えられている。
そこが嬉しく、それであるからこそ、心に、体に、滋味が染み渡っていくのだった。