大分 湯布院「JINGU」

Tashi Gyamtso(タシ・ジャムツォ) シェフは、チベット人である。

食べ歩き ,

Tashi Gyamtso(タシ・ジャムツォ) シェフは、チベット人である。
アメリカに渡り、様々なレストランで修行したのち、「ブルーヒル」で4年間スーシェフを務め、請われて来日した。
「なぜ料理人をめざそうとおもったのですか?」
そう聞くと、彼は静かに答えた。
「チベットでは、ほとんど自給自足で、一般規模では貧しい食事でした。でも野菜は美味しかった。だから僕はもっと野菜をおいしくする料理人になりたかったんです」。
流暢な日本語で話すことに驚き、
「日本語がお上手ですね。なぜ短期間で上達されたのですか?」
そう聞くと、
「生産者と話がしたかったんです」。
そう言って、彼の澄んだ瞳に、一瞬炎が灯った。
 
来春湯布院にオープンするレストラン「JINGU」は、「Farm to Table」 を掲げ、レストランより先に、隣接した土地に畑を作り、京都の高名な農家の方を招いたのだという。
その畑から届いた野菜による料理をいただいた。
鹿や鶏、蛤などもあるが、全12皿、アミューズからデセールに至るまで、主役は野菜である。
数種の野菜が盛り合わせた料理が、次々と出される。
今まで数多くの野菜盛り合わせの料理に出会ってきた。
しかしミッシェル・ブラスの「ガルグイユ」、「ラブランシュ」田代シェフの「こだわり野菜のサラダ」、「コートドール」斉須シェフの「季節の野菜のエチュベ、コリアンダー風味」を凌駕できる料理はない。
だがここにいた。
タシシェフの料理には、愛がある。
野菜の声に耳を傾けた、敬愛に満ちている。
来春、日本、いや世界から着目されるレストランがまた一つできることが、楽しみでならない。