食べ歩き ,

「豚にしますか? 牛にしますか?」そう聞かれたので、「両方お願いします」と、答えた。
白金の「三和」で、サカエヤの肉を食べる,初めての機会である。
誠実な渡邉大祐シェフは、来店前に一度肉を仕入れて、新保さんに試食してもらったという。
渡辺シェフは、肉をいじる焼き方の人である。
炭火の上に渡した上下二段の網に乗せた肉を、裏返すだけでなく、遠火にしたり近火にしたりしながら焼いていく。
他の料理を同時進行しながら、肉に心傾け、焼き上げる。
「走る豚」が運ばれた。
噛んで目を見開く。
肉に躍動感がある。
豚舎の中で飼われることなく、青空の下、大地を走りながら自由に育ってきた豚の筋肉が、歯と歯の間で踊っている。
「一番炭火に向く豚だと思う」。
そう新保さんが言われた。
言葉通り、走る豚の豊かで奔放な生命力を伸ばした焼きだった。
次に、近江牛のランプ肉が運ばれた。
素晴らしい。柔らかすぎない。
ランプの良さを出している。
筋肉の動きが少ないため、柔らかくキメが細かい部位だが、噛み締める喜びがあった。
歯が肉を断ち切ると、赤身肉の濃厚なうまみが溢れ出す。
笑った。
食欲を沸かせ、食べている自分を高揚させる焼き方である。
赤身肉をうまく焼くシェフは多くいない。
今度は、ヒレ肉や内ひらを焼いてもらいたい。