おやきが好きではない。
口の中の水分が取られる感じと、野沢菜やネギ味噌といった中の具に今一つ魅力が感じられず、積極的には食べようとしない料理になっている。
長野県の人ごめんなさい。
しかしここに、この伝統料理と向き合う人がいる。
飯田「柚木元」の萩原さんである。
1月は、「猪と紅玉のおやき」だった。
カリッと焼かれた生地が弾ければ、猪が持つ脂の甘みと林檎の甘酢っぱさが響き合い、共鳴する。
4月は、行者ニンニクと千代幻豚のバラ肉お焼きだった。
餅を割ると、豚脂の甘い香りが一気に広がる。
かじれば、行者ニンニクの香りが豚肉の滋味を盛り立てる。
そういえば去年の4月は、これにチーズを加えていたっけ。
10月は、松茸のおやきであった。
おやきに包むと松茸の香りが抜けてしまうため、ここに至るまで、2年間試作したという。
松茸は、ベシャメルソースに包まれていた。
口に運べば、皮がモチッと破け、ぺしゃメルソースのうまみが流れ出す。
そしてゆっくりと噛むと、松茸が現れ、芳香を放つのだった。
写真でわかるように、皮の配合や焼き方も変えているのだろう。
おいしいものは世の中にたくさんある。
たくさん溢れている世の中だからからこそ、おいしいことの裏に文化を込めなくてはいけないのではないだろうか。
伝統料理は、ただ保全し、守っていも残らない。
常に革新を続け、ある時はモダンに、ある時は大胆な発想を込める。
こうしてこそ、おやきは永遠に生き残っていく。