小路「げんや¥

大阪焼肉の実力を掘る。その2

食べ歩き ,

  • 1ナッパキムチ

  • 2キムチ盛り

  • 3生セン

  • 7コブクロたたき

店に入ると、女子高生バイトの子が、大きなボウルに入れたもやしに味付けして混ぜていた。
茹でたてゆえに、湯気が朦々と上がっている。
手前の厨房では、従業員が艶やかなレバーを切り、奥ではご主人が肉の塊を掃除し、切り始めている。
この光景を見ただけで、「ここはうまい。間違いない」と、確信した。
大阪は小路という初めて降りる駅の焼肉屋である。
「コブクロタタキ、今日ある?」 
小学生の頃から通っているという常連が聞くと、
「はい、できますよ」。
女子高校生が笑顔で、可愛らしい声で答えた。
その光景を見て思う。
焼肉文化が根付くとはこういうことなのだと。
東京で、ここが美味しい、あそこが美味しいなんて、ちゃんちゃらおかしい。
従業員がリズミカルにコブクロをたたく。
やがて出された皿に驚いた。
水キムチを少し辛くしたような冷たいスープに、刻みコブクロが入っているではないか。
こいつをスプーンで、ツルツルと食べるのだな。
ズズッ。ツルル。
これはコブクロに慣れ親しんだ人にしか作れない味である。
さらに「生セン」が来て、目を見開いた。
なんともきれいである。そして分厚い。
あの薄っぺらな紙を食べているかのようなセンマイとは、まったく違う。
ぐっとアゴに力入れれば、歯がせんまいにめりこんでいく。
この感覚があってこそ、生センである。
ナッパキムチもペチュキムチも、オイキムチも、熟成が効いた酸味があっていい。
しかしここの大根キムチは細切りにされていた。
こりゃあカクテキより楽しいぞ。
「むし豚」は、豚脂の甘い香りが溶けていく中で、肉がしなやかに滋味を出す。
そして作りたて「もやしナムル」は、作り置きもやしナムル特有の匂いもなく、清々しい。
ひげ根も取られていて、これが料理である。
まだ主役の焼肉も鍋も食べていないというのに、この高揚感、たまらないね。
以下次号