一平飯店は流れが美しい。
ピアニシモからフォルテへ。
優しさを挟みながら再び激しく、そして終章は穏やかに別れを告げる。
この第1章のピアニシモたる淡味を象徴する一つが、水蓮菜とクラゲの冷菜ではないか。
クラゲの頭と水蓮菜の合わせにセンスを感じる。
そして塩と太白油だけで合わせたことによって、水蓮菜の淡い香りが揺らぐ中で、クラゲと水蓮菜の互いの食感が生きてくる。
静かなる流れのピークが、上湯嫩鮑翅である。
淡い味わいの中から、スープの馥郁たる香りが立ち上り、モウカザメらしいコラーゲンの旨味が舌に乗ってくる。
大味必淡という言葉を表した料理だろう。
しかしここで料理は、第二章を迎え、激しく強くなる。
穴子と茄子の甘辛炒め、宮保炒星鰻である。
甘く、辛く、しょっぱく、酸っぱく、うまくという要素がバランスよくなじみながら、舌の上で爆発する。
その中で穴子とナスの甘みが、じんわりと滲み出る。
そしてこの後料理は、フォルテシモを鳴らしながら続き、最後の黄韮の清湯麺で優しい終章を迎えて甘みへと移っていくのだ。
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東京最高23