代々木公園「オストゥ」

ピエモンテに愛を込めて。

食べ歩き ,

★馬肉のカルネクルーダ

★フィナンツェーラ

フィナンツェーラ(ピエモンテ風モツ煮込み)を一口食べて、思わず唸った。

気持ちが穏やかになった。

鶏のトサカや砂肝、レバー、豚レバー、リー・ド・ヴォーなどが、じっとりと煮込まれている。

それぞれに、それぞれに食感を生かして、微かな命の甘みがこぼれ落ちる。

この料理にかけたシェフの情熱が、静かに舌を過ぎ、喉に落ちて、幸せと変化する。

そして、

 

★菊芋のスフォルマート

★ランゲ風ソース合えタヤリン

★熟成カルナローリ米を使ったヴェルジェーゼ風リゾット

口に入れた途端、心が押し黙る。

さざ波が消えて、安寧な気分になる。

まず、赤玉ねぎのジャムのふっくらとした甘みがやってくる。

そしてパルミジャーノの塩気とうま味が広がり、バルサミコの酸が漂う。

甘味、塩気、うま味、酸味。どれもが突出することなく、見事なバランスで佇んでいる。

その均整が美しい。

限りなく美しい。

美しさが、幸せのため息をつかせる。

いたってシンプルなリゾットであるが、この寸分の狂いもなき味の均整は、至難の道だと思う。

「酸味は味わいに色彩を加える、重要な要素だと思っています」。

そう宮根シェフは語った。

100年前に、ニーノ・ヴェルジェーゼというシェフが作ったレシピで、シェフがバローロで働いていた時代に、何度も作ったというスペシャリテだという。

その料理は、質素であるということが、いかに豊かさをもたらすかということを、教えてくれる。

 

★ブラザートアルバローロ

近江牛ホホ肉使ったピエモンテ料理「ブラザートアル バローロ」である。

なんと穏やかなのだろうか。

なんと色っぽいのだろうか。

牛肉は舌の上ではらりと崩れ、ほの甘い香りと滋味が、バローロの深い、品のあるうまみと抱き合う。

バローロも牛肉も、前には出ようとせず、共に高みのぼりながら同化し、第三の味わいへと昇華していく。

シェフに聞くと、サカエヤから仕入れたその肉は、コラーゲンが多く、それがソースにさらなる深みを与えて、他の牛肉とは違う、さらに一段登った味わいに仕上がったという。

この人間の手による料理なのに、それを感じさせない自然な味わいは、バローロ村で修行した、宮根シェフの信念である。

 

★パンナコッタ