開陽亭
この店に初めて訪ねたのは、今から46年前だった。
大学3年生で京都に行って食べ歩いた時の一軒目に、先斗町にあった、「開陽亭」を訪ねた。
店を知ったのは、映画監督で稀代の食いしん坊であった山本嘉次郎氏のガイドブック「京都食べ歩き地図」昭文社刊である。
鴨川を見下ろすテラスに案内され(その頃は床という言葉も知らなかった)、気分が高揚したことを覚えている。
ガイドブックに書かれていた名物「洋食弁当」を食べたかったが、大学生には高く、バンバーグを食べた.
その漆黒のデミグラスソース(ここではドゥミグラスという)の奥深さに驚嘆したことを、覚えている。
翌年、念願の洋食弁当を食べ、その一つ一つの美味しさに痺れ、特に初めて食べるヘレ肉の照り焼きには、落涙した(フィレをヘレということもこの時学んだ)。
今年「開用亭」は、先斗町から宮川町へ移転した。
メキシコサラダ、エビフライ、貝柱フライ、ボークヒレカツ、笹身カツ、ミートコロッケ、牛ヘレ照り焼きは、一つ一つ丁寧な仕事が生きて、しみじみおいしい。
これで2700円はお値打ちだと思う。
しかし牛はヘレなのに、なぜ豚は、ボークヒレカツと呼ぶのだろう。