「朝餉」という言葉の、「食」と「向」の組み合わせでなる「餉」という文字は、「食を相手に供する」という意味だという。
しかしそれは、穢れなき朝の時間に、食と向かい合い、今日が始まることを感謝することでもあると思う。
木々の葉が風と戯れ、せせらぎの音と鳥の鳴き声に囲まれた、
「忘れ里 雅叙園」の朝食は、その意味を問うていた。
炊きたての白いご飯と玄米ご飯に、蒸し立てのサツマイモ。
落とし卵をした根菜がたっぷりと入った麦味噌の味噌汁。
作りたての豆乳とそばがき。
青菜のおひたしと豆腐のサラダ。
干しキビナゴの焼き物に、ナス煮。
ひじきの豆の炊いたものに、ゆべしと大根漬け。
野菜の卵とじに豚みそ。
一つ一つの料理をよく噛んで、舌でじっくりと味わい、香りを受け止める。
一つの料理を食べ終わっては深呼吸をする。
体に満ちていく栄養を味わって、ありがとうと言ってみる。
食べながら、愛する人たちの顔が浮かんで、食べさせたいなあと思う。
これが朝餉だ。
食と向き合うだけではない、「朝と向き合う」大切な、大切な儀式である。