「めくみ」7・5

食べ歩き ,

「めくみ」7・5
現状に満足せず、常に明日のベストを思い描く。
「めくみ」の山口さんは、そんな職人としての資質を持ち続けている人である。
一昨年の暮れ以来だが、また酢飯が変わっていた。
温度も、酢の加減も米も違う。
常に勉強と研究を怠りない。
「塩は細かい方がいいと思っていましたが、そうではない場合もあるんですね」。
「奥能登に、心臓を止めない神経じめを学者と研究して、実践している若い漁師がいるんです」
「もう寝る時間がなくて」と言いながら、毎日250キロ車を走らせて、仕入れに行く。
先日なんか三日で1650キロ走ったという。
福井へ、奥能登へ、富山に車を走らせる。
そうして得た魚を、研究し、何度も試作して出される。
「ずっと休んでいましたから、魚を研究試作する時間が持てました。いろいろ新しいことをやってきてもう手詰まりかなあと思っていたのですが、新しいことを産むことができた。あと五年は楽しめます」。
そういって嬉しそうに笑われた。
「汁を飲んでください、牡蠣は出汁ガラですけどないと寂しいでしょ」といって出された蒸し牡蠣は、15分強火で蒸したという。
ああ、なんというミネラル。
海の牛乳という表現が失礼にあたる、澄んでいて濃いうま味である。
「これから身は美味しくなくなるけど黄色い脂を持って肝が美味しくなる」
福井産の蒸し鮑は、香りが口の中で渦を巻くほど濃密である。
続いての「肝の肝あえ」は、雑味なく、かすかに苦味を宿している。
お造りは、新湊のボタン海老に平目、アオリイカ。
ボタン海老がいい、特有の甘みの執拗さがなく、甘みは濃いが切れ味が良く、エレガントである。
茹でた、テイバイ貝。FB参照。
加熱すると美味しい。ゼラチンの量
ゼラチンが多いとこは食べて、旨味の多いとこは乾燥させて出汁にし、水管美味しくなくて外して軽くあぶるのだという。
のどぐろの塩焼きは、ふわふわで、脂の濃さより、空気感を含んだ食感がたのしい。
ばちことからすみ
続いて握り
細かく切ったイカがそうっと握られた酢飯と同化する。なじむ
ご飯がうまい。
天日干しのコメに変えたのだという。
続いての白エビは酢飯とともに、舌に乗せた瞬間、羽毛のようにふわりと舞う。
夢を見たイルカのような握りである。
小浜の赤ウニは握りで、圧倒的でうっとりとさせる官能がたなびく。
余韻が美しく、上質なケーキのようでもある。
はだてのムラサキウニは、自家製海苔の佃煮と混ぜて小丼仕立て。
スマガツオ、体脂肪少なく、うま味が強い、海苔巻きにして。
ボタン海老 造り同様、この甘みの優美さはなんだろう。
ボタン海老特有の、しつこさが微塵もなく、余韻に残る甘みがたまらない。
鮑細切りの握り、珍しい。酢飯と馴染む。
緩やかな香りが漂う。塩と山葵で。
炙りノドグロ。
穴子九州
アゴ出しのだし巻き、一枚だとノリ溶けるため二枚で巻く。
甘エビの出汁が入った、玉子焼き。