「甘いの食べるかい?」
「はい」と答えると、ご主人はしょうがないなあという顔をした。
それでいてどこか嬉しそうである。
「かみさんが、外で食べる寒天は匂いがあるから嫌だっていうんで、工夫し作ったんだ」。
寒天、小豆粒餡、黒蜜である。
寒天は言われる通り、癖が一切ない。
味が澄んでいて、クリッと噛んだ瞬間に純水になる。
小豆の香りを残したあんこもよければ、コク深い黒蜜もよい。
おそらく僕の知る限り、世界一のあんみつではないだろうか。
「あんこはね、休みの日に店でずっと炊いているんだ。時々火加減を見ながらね。そろそろ出来上がるなあって頃があるでしょ。そん時に餅を焼いておいて、出来立てのあんこと合わせるん。ありゃうまいねえ」。
「なら今度炊く時に教えてください。僕が火加減見ておきます」
そういうとご主人はまた、しょうがないなあという顔でニヤリと笑うのだった。