「あつから」。

食べ歩き ,

暑い日が続けば続くほど 「熱くて辛い」、すなわち「あつから」が食べたくなるのが、人間の生理現象である。
韓国、アフリカ、四川、タイ、メキシコなど、「あつから」は様々あるが、
今夏はインドに絞ることにした。
で、1stあつからは、大森「ケララの風」
ご主人が前の仕事で滞在し、魅了されたという、インドの南端に近いケララ州の料理を出す店だ。

まずは「ワダ」

豆の粉で作ったドーナツで、噛めばもっちりとして、素朴な甘味がある。
添えられたマサラソースとココナッツペーストに浸して食べる。
「玉葱とゴーヤのマサラ」は、甘味と酸味がまろやかに溶け合った、淡いウースターソースのような複雑味に、ゴーヤの苦味とスパイスの辛みが加わった味わい。

「蛇瓜のトーレ」は、微塵に切った瓜と細かく削ったココナッツの炒め物で、ほんのりとした甘い香りがいい。時折あられのようなカリカリとした食感があるのは、米粒大のウーラトダルという豆を揚げたもの。
この二つを、イディヤッパンという、米粉の蒸し麺に絡めて食べる。

「海老のマサラ炒め」

玉葱と青唐辛子と共に、ココナッツ風味のマサラで炒めた料理。
こうした料理はココナッツの味が出すぎ手しまうことが多いが、バランスよく、辛味が海老の甘味を引き立てにんまり。

酢と塩気だけを利かせたサラダ。葉類に玉葱、トマトに加え、

カリリと弾む揚げたチャナ豆の食感が楽しい。

魚料理は、「イサキのバナナ葉包み焼き」。

バナナ葉の香りとトマトの酸味と甘味が濃く出たソースに包まれた、しっとりと蒸しあがったいさきの身が優しい。
鹿児島銘菓かるかんを思わせる、ふんわりしなやかな食感の、米とココナッツのパン、<

アッパムに包んで食べれば、止まらない。

肉料理は、「ケララ ローストチキン」

トマトベースの深い味を持つソースの上に、肉汁に富むローストチキンが盛られる。
添えられるのは、「かぼちゃのクートゥという、スパイスを利かせた、豆と南瓜の炒め煮と、エリンギと玉葱、ピーマン、インゲン、茄子を、ココナッツミルク風味で炒め合わせた皿。交互に食べながら、あるいは混ぜ合わせて食べれば、次第に深みにはまっていく。

デザートは、黒糖とココナッツミルク、カルダモンを使った、エキゾチックな香り漂う、ケララのプリン「ヴァタラッパン」

黒糖のコクのある甘味にカルダモンの香りが響く、未踏の味わい。
その不思議に胸が揺らぐ。

あつからに陶酔し、その辛くしびれた舌の余韻をつめあまで沈静する、
なんとも幸せなひととき。