二つの才能が出会う。

食べ歩き ,

どこまでも軽やかである。

しかし生地が軽いのではない。

具材が乗った部分は、へたらずに、モチッとして、ほのかな甘い香りがある。

コルニチョーネ(縁)は、同様に根性があるが、もちもちすぎず、サクッと歯が入っていく。

そんな生地だが、他の店より塩が淡い。

だから重くない。

マルゲリータも黄色と赤のトマトを使ったマリナーラも、くどくなく、トマトやチーズと生地が、まろやかに抱き合っている。

こんなピッツァは、初めてである。

最も気に入ったのは、最古のピッツァと言われる「マストゥニコーラ」である。

本来はラードとバジルのピッツァだが、ラードの代わりに椿油を使って焼き上げられていた。

「いつまでも噛み締めていたい」。

一口噛んで、そう思った。

奥歯で小麦を踏み締めているような、甘い酔いがある。

噛むほどに、生地の力が湧き出て、胸が熱くさせる。

「カルツォーネ」も、まったく違った。

生地が厚めで、噛む喜びがある。

グッと力を入れれば、溶けた燻製チーズのプロヴォローネが流れ出し、ニヤリと笑う。

そして添えられた、フィノッキオ入り燻製肉のラグーをからめれば、その複雑ながら丸く深い味に、蕩然となって、しばし宙を見つめてしまう。

なにしろそのラグーを作ったのは、元「オステリアデッロスクード」小池シェフなのである。

千葉の時とは配合を変え、種類によって生地の配合も変えているという、ピッツァイオーロの第一人者鈴川シェフと、イタリア伝統料理を作らせば右に出る人はいない小池シェフ二人による、奇跡的な料理と店の話はまた後ほど。

 

赤坂「per te」にて