店名がいい。
「ウトロ漁協婦人部食堂」ときた。
その名の通り、漁師の奥さんたちが料理を作る食堂なのである。
できますものは、いくら丼、鮭親子丼、ホッケ定食にメンメ定食。
カツ丼、カツカレー、生姜焼きに豚丼、炒飯に、ラーメンもある。
「うまっ」。
隣の初老の男性か、ホッケを一口食べた瞬間、つぶやいた。
「コレ、ホントにうまい」。
そう言ってご飯をおかわりした。
かなりホッケに心が動いたが、「いくら丼」にした。
連れは、カレーである。
先にいくら丼が運ばれた
ご飯の中心に、イクラがこんもりと盛られている。
だがその、こんもり具合が半端ない。
試しに箸を刺してみたら、3センチ沈んでようやくご飯に到達した。
にやりと笑って、かき込む。
イクラの甘みが熱々ご飯の甘みと抱き合って、鼻息が荒くなる。
脇目も振らずに一気呵成といきたいところだが、カレーも運ばれた。
このカレーもいい。
豚バラ肉がゴロゴロと入ったカレーは、漁から帰った男たちを鼓舞し、癒してきたのだろう。
たくましさと優しさが溶け合っていて、心を虜にする。
もう1人が頼んだのはカツカレーで、一切れだけカツをいただいた。
カレーにまみれた揚げたてカツを一口たべた瞬間、プロの食べ手としては、安易に発言してはいけない言葉が、思わず出た。
「ウマっ!」。