江戸っ子が最も大切にした美意識である「粋」とはなんだろうか?
九鬼周造は、「いきの構造」の中で、粋とは、「媚態」と「意気地」と「諦め」の3要素から成り立っていて、「色気(媚態)」を「心の強さ・張り(意気地)」と「垢抜けした態度(諦め)」でセーブした絶妙なバランス状態を指すという。
つまりは垢抜けた色気ということでもある。
ここに「卯の花」という料理がある。
皆さんご存知のおから料理であるが、これが江戸料理となると、ちょいと様子が違う。
器に盛ったら、天に〆たコハダと酢生姜をのせる。
食べれば穏やかで、あの野暮ったいおから料理とは、かけ離れていく。
海老や魚の優しい甘みとおからの甘みが、ふんわりと共存していて、心を平穏にする。
それをコハダや生姜キュッと引き締めるところなんざ、にくいねえ。
素朴なおからの料理に色気をにじませる。
だからと言って、やりすぎていない。
どこか達観した味わいとシャープな酸味が、色気を抑えている。
まさに「粋」な料理がここにある。