このエビチリは、もう二度と食べることが叶わない。
塩味も甘みも精妙で、淡味の中に海老の風味が生きている。
餡に、溌剌たる海老の香りが漂い、胸をつく。
どこまでも優しく、美しい。
それは品である。
うまくしすぎることはぜず、分をわきまえた知性であり、技なのだろう。
口にした瞬間に、うまいっと叫ぶのではなく、心の中で静かに「うまいなあ」とつぶやかせる味である。
店主山本豊さんは、1949年の生まれだから、70歳になられる。
今年12月14日に、32年続けられた店を畳まれる決意をされた。
閉店するからといって気負うこともない。
いつもと同じ営業で、淡々と料理を作られていた。
それが誠実ということなのだろう。
吉祥寺「竹爐山房」の全料理は、別コラムを参照してください
閉店