寿司屋のつまみに、タコの桜煮が登場することが多い。
どこでもおいしいものだが、中でもこれは上質だなあと感じるものに出くわすことがある。
この料理は、タコの皮のゼラチン質の旨味と中心の白い筋肉の淡い旨味という、対比を味わうことに楽しみがある。
皮は分厚く、とろん、てれんとした食感が味わえれば最高で、筋肉は硬くなりすぎずにしなやかで、噛むほどに柔らかな甘みが滲み出るものが好ましい。
しかしこの理想にはなかなか出会えない。
写真を見比べていただきたい。
一枚目が理想であり、2枚目はよく見かけるタコである。
一枚目のタコの桜煮は素晴らしかった。
噛めば、皮がぶるんと震えて、歯が優しく抱きすくめられ、甘い煮汁とともに栗に似た甘い香りが広がっていく。
身は柔らかく、すうっと歯が入ったかと思うと、品のある甘みが滲み出す。
いい桜煮とは、官能的であることを教えられた瞬間だった。
水天宮「鮨すぎた」にて。
後記
こうして書いているうちに疑問がたくさん湧いてきた。
たこの脚(腕)を切っているのを見る限りでは、大体同じ部位だと思う。
流れの速い場所にいるタコは踏ん張りがきくよう太く短く強固になるが、すると皮が厚くなるのか?
皮が厚いタコの方が白い部分はしなやかなのか?
加熱する際、皮が厚い方が白い部分はしなやかになるのか?
オスとメスで皮の厚さが違うのか?
あの赤い部分は、果たして皮と呼んでいいのか?
どなたか知っている方がいたら教えてください。