「みなさんよく食べますねえ」。帰り際に、シェフの鈴木美樹さんが言われた。
嬉しい。本望である。
この店に来ると、どうしてこんなに食べ過ぎちゃうのだろう。
どうして飲み過ぎちゃうのだろう。
どの料理も、食材の野太い声に満ちて心を揺さぶるせいもあろう。
身近にある食材だけで、いかに美味しくたくましい料理を作るかを考えてきた民族の叡智と精神が、美樹さんに受け継がれているせいもあろう。
シャイだけど凛々しい美樹さん自身の魅力もあろう。
この日も7人で、料理を11種類とワインを11本ほど(多分)いただいた。
クタクタになって甘い、ソラマメの香りを吸ったカルチョッフィ。
とろとろに崩れたジャガイモと爆ぜるような赤イカが口の中で出会う料理。
グリンピースの優しい甘みにあふれたパスタ。
羊塊肉の丸焼き。
笑いが絶えない。食欲が絶えない。グラスが空になることがない。
鈴木家はそんな食堂である。
共に食べ、飲み、喋り、笑いながら、
「人生は楽しいね」。
そう思いあう食堂である。
「みなさんよく食べますねえ」
食べ歩き ,