静かな喜びが漂っていた。
地の香りが、弾けていた。
素麺と同じ寸に切られたアスパラは、歯の間で青い香りを滲ませ、わらびはそっと山の冷気を連れてくる。
杜氏たちの肴であったという、松前漬けや鞍掛豆のひたしは、愚直なうまさで酒を飲ませ、筍と豚肉の花山椒煮は、野山の香りを撒き散らしながら、胸を弾ませる。
餅にした筍は、筍たる香りを広げながら出汁と溶け合い、山独活は
凛々しい歯応えでご飯と共鳴する。
山独活ご飯に添えられた、筍の佃煮も独活の梅煮も、しみじみとした幸せがある。
どこにもこれ見よがしな力がない。
季節と郷土への慎ましやかな愛が心を打つ。
朴訥な贅沢に目を閉じる。
これが日本料理いうものだ。
小布施、小布施堂の夕餉。
静かな喜びが漂っていた
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