「青菜炒めを腐乳でお願い」。
席につくなり頼むと、しばらくしてスープが運ばれた。
鶏のもみじと豚スペアリブのスープである。
コラーゲンの甘みが溶け込んだ、淡い味のスープが、熱く喉を過ぎ、胃袋に落ちて、体を温める。
「青菜炒めをお持ちしました」。
ああ今日は油菜心か。
太い茎に腐乳の強かな味が絡み付いて、ご飯が進む。
豚バラ肉のカレー煮込みも、小鉢で出してくれ、これまたご飯が恋しくなってたまらない。
青菜を食べて、白いご飯を食べる。
カレーを少しご飯にかける。
ご飯をレンゲに乗せ、スープに浸して食べる。
なんてことないけど、さまざまな味が、ご飯をいっそう引き立てる。
そして最後は、青菜がなくなった皿の炒め汁にご飯をぶち込んで、混ぜに混ぜ、優秀な美を締めくくった。
どうして日本には、こんな手軽な中国料理を、おいしく食べさせる店が少ないのだろう。
虎横「香港焼味璃宮」にて。