銀座「ハプスブルグ・ファイルヒェン」。
「KuK」時代と変わらず、神田真吾シェフの料理は、繊細と優しさに満ちている。
前菜の「毛ガニと丹波黒枝豆のマリネ カリフラワーのアオフラオフ カルトフェルネスト」。シンプルなヴィネグレットでマリネした毛ガニは、蟹の甘みに満ちていて、その海の滋養が舌に乗った瞬間、カリフラワーのムースが溶けていく。
蟹とカリフラワーの気品ある競演に、しばしうっとりとなる。
カルトフェ=芋 ネスト=網は、インカの目覚めを揚げたもので、豆と共に食感のアクセントで楽しませる。
その他菊芋のミルクのような優しい甘みと土の香りが、舌をいたわるスープ。
見事なキレのあるソースで煮込んだ、マンガリッツァ豚を使ったグーラッシュ。
スパイス入り赤ワインソースと合わせたバラチンケン(クレープ)など、宮廷料理らしい品格と色気を備えながら、奥底には、長い間オーストリア人に愛されてきた料理の本質が、脈々と流れていた。
彼は37歳のはずで、これからが見どころのシェフである。