焼味は明炉にて、勇気と感を注ぎ込んで焼き上げた者だけに宿る、香ばしさと豊かな肉汁がある、
中でも豚の背脂で挟んだレバーの焼物は、脂の甘みとればーのねちっこい甘味が出会い、ああ中国料理にも色気があるのさと、膝を打つ。
クラゲと紅心大根の和え物は、細く、細く同寸に切られた大根とクラゲが、口の中でワルツを舞って、板仕事の確かさに唸らせる。
そして豚肺と杏仁スープ。
ああ誰か、一週間に一回、この湯を飲ませてくれ。
静かな一口目から、次第に滋味が膨らんで、喉に落ちていく後には、杏仁の甘い香りが微笑んでいる。
甘美な余韻に、うっとりと中空を見つめ、「おいしい」と呟く。
そして、アスパラの香りと練れたハムユイ塩気が出会う炒め物。
これまた板仕事の的確さが光る、もやしを同幅に切って豚肉と炒めあわせた「大豆もやしと豚肉の炒め」。
豚肉のうま味にもやしが香り、歯応えが弾んで、しみじみとうまい。
ハムがで出しゃばらずに、鶏の淡い滋味を優しく持ち上げている、「鶏と金華ハム重ね蒸し」。
「御飯お願いします」と叫んだのは、豆腐を蝦子のふくよかなうま味が包み込んだ「海老の卵と豆腐の煮込み」。
そして、淡味に仕上げてもらった「金目鯛の漬物蒸し」は、キンメダイの品を引き出していて、自家製コールラビ漬け物の酸味が食欲をくすぐる。
〆は篠原料理長も大好きだと言う「干し貝柱と卵白の炒飯」。
順徳スタイル生姜ミルクプリンの優しさと油で揚げた団子の懐かしさで宴席は巻くを閉じた。
「香宮」篠原裕幸料理長34歳。
将来香港で料理長になる夢を抱く青年の料理は、凛々しさと繊細さに満ち満ちて、僕らの心を撃ち抜く。
篠原裕幸料理長34歳。
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