半分に切ったトマトを、手でつぶしてパンになすりつける。
ライ麦入りパンは焦げるまで焼くながら、中はしっとりと。
伸びやかなトマトの酸味と焦げの苦みを伴ったパンの剛胆に、オリーブ油の香りがまとう。
素朴なのに、一つの生命体となって迫る凛々しさがあって、「うまいっ」と、唸る。
語源は、ローマ地方の方言で「炭火であぶる」を意味するブルスカーレ(bruscare)に由来して、「焦げる」が語源なった本来のブルスケッタは、パンがこげてなくてはいけない。
それでこそ、人々の汗が滲んだ味わいが生まれるのだ。