和食とはなにか

食べ歩き ,

和食とはなにか。
その美しさは、なにに宿っているのか。
素朴な答えが、「栩翁S」の朝食にある。
福井で獲れた、30㎝はある大きな真アジは、炭火で焼かれ、箸を入れれば、パリッと皮が弾けて、身に入っていく。
ほの甘いうま味がのった尻尾の部分、脂がのった背側の部分、香ばしい皮としっとりとした身を一緒に口に入れ、すかさず炊きたてのご飯を食べる。
静岡のキンキの照り焼きは、締まった身が舌の上ではらりはらりと舞って、柔らかな甘みを滲ませる。
こいつもすかさずご飯だ、たまらない。
季節を感じさせるお新香に香り高い味噌汁、しんとり菜のおひたし。
食べゆく内に、満腹に向かううちに、背骨が伸びて姿勢が正され、身の内が清らかになっていく。
この贅沢(魚は1種類だけどね)が9百円とは、なんとお値打だろう。
凡百の焼き魚にはない品のある後味と命の躍動が、海に囲まれし国に生まれてよかったと、感謝をさせる。