食べた瞬間に、脳みそが白くなり、溶けていった。
これはいけません。
今まで食べてきたのは、甘エビという名前だけのエビだった。
それは、生命の甘みとは何か? と問うてくる。
生命の神秘を、尋ねてくる。
食べるほどに、この生物の生息を知りたくなる。
噛めば柔らかいのだが、真の甘エビの矜持だろうか。微かな筋肉の主張がある。
甘さの純度が極めて高く、よく甘エビを食べて感じる、ダレた甘みが一切ない。
高貴な甘味というものがあるとしたら、唯一ここにしかないだろう。
それが、触れてはいけぬ聖域への畏怖を感じさせて、鳥肌を立たせるのである。
そしてまたミソがいけません。
とろんと舌に広がり、甘いような、そうではないような味わいが、じわりと広がる。
味がもはや、人智を超えている。
そしてその余韻は、三十分経っても薄くなるどころか、次第に濃くなっていくのであった。
鳥取「なつ吉(かに吉」にて。