〜フジツボのしたたかさ〜
シコッ、シャクッと歯の間で弾む。
そして甘いエキスが流れ出る。
食べるところは極めて少ないが、十二分に満足感があって、病みつきになる。
さらにはそのダシが素晴らしい。
舌の奥に、甘みと旨みが訴えかけて、ううむと唸らせるが、上品でもある。
貝に似ているが、ミルキーなコハク酸の旨みとは異なり、海老が持つ甘みに似ている。
海老の甘みはあるものの、甲殻類の香りはなく、さらりとしている。
だから最初はさりげないように感じるが、隠された濃密が顔を出して、心が掴まれる。
フジツボとは、そんなしたたかなやつなのであった。
八戸の割烹「千陽」にて。
八戸の海の恵みが弾ける、素晴らしき「千陽」の全料理はこちらから