「いい店とは、会いたい人がいる店である」シリーズ4
店主宮ちゃん37歳は、目力がいい。
目がちょっと、桐谷健太に似ていて、力が強いのだが、笑うとかわいい。
それに増して惹かれるのが、女将のももちゃんである。
ハイボールを頼むと、「ハイナボールワン!」と、威勢よく応える。
料理を運んできて、「にいさん、おまちどおさんでした」と、言われれば、大抵の男は惚れちまう。
元芸妓だという彼女は、明晰で底抜けに明るく、美人であり、絵が達者で、コロッケのモノマネがうまいらしい。
お客さんの一人がビールをどうぞと、進めたら、「やったあ」と、子供のように両手を上げて喜び、心から美味しそうに一気で飲んだ。
そして一緒に飲んだサービスのお母さんと、
「うまいっ。死ぬぅぅ。でも生き返る」。
「ああ、生き返るけど、死んでない」。
と、合掌した。
最後の締めは、「ももちゃんカレー」を頼んだ。
今夜は「鱧のキーマカレー」だという。
玉ねぎとトマトだけで作ったというそれは、日本料理屋のレベルではない。
スパイス使いが素晴らしく、香り高くて、ハモの旨味が生きている。
味が素晴らしいと褒めると、ももちゃんは言った。
「宮ちゃんがもしダメになったら、カレー屋でやってこうと思うてます」。
ホント、ステキな人である。
京都「食堂みやざき」にて。